制服のビロキン

関東鳥屋の時系列崩壊ブログ

20231018-25 舳倉島遠征⓪

10/18〜25の7泊8日で初の舳倉島へ遠征に行ってきた。成果もさることながら旅としても非常に楽しく、鳥見人生の中でも有数の充実した時間だったので、忘れないうちに出来事を記す。

この島を初めて知ったのは小学生に上がった頃。入学祝いで買って貰った550図鑑がきっかけだ。それまで名前も知らなかった鳥の数々に衝撃を受けるとともに、その多くの撮影地として記載されていた「舳倉島」の文字に引き付けられた。両親に読み方を訊いてもわからず、一緒に調べたのが懐かしい。「へぐらじま」いつかこの島に行ってみたいと強く思った。

月日は流れ今年、ついに渡島が実現した。本当は大学初期に行ってみたかったのだが、東京からはアクセスが悪く前泊が必須であり、特に秋は船の欠航率が高くて日程が読みづらい。その上コロナもあってなかなか踏み切れずにいた。そんな経緯もあり、社会人になる前には行っておきたかったため、今年は絶対に行くと決めていた。そして、どうせならと1週間の長期滞在を決めた。

バスを乗り継いで輪島に着いたのが17日の夕方。天気予報では翌日の海況は静穏で、ほぼ確実に出航するだろうとのこと。肌寒い日本海側の空に響くジョウビタキタヒバリの鳴き声を聞きながら、ワクワクが止まらなかった。せっかくなので街角の足湯に入ったり、お土産屋さんで輪島塗の箸を買ったり、旅情に浸って夜までの時間を過ごした。

f:id:Canvasback:20231115155432j:image

 

 

23.7.7-8 八丈航路

3年振りの夏八丈。この日は春先から続いていた忙しい日々がひと段落したので、解放感と勢いのまま1人で竹芝へ。予報では南西風が10m/sと条件も悪くない。あわよくばアカオネッタイやオナガナギ、シロハラナギなどの南方系が出ればと期待した。

 

いつも通り21時半に竹芝に到着。この日は金曜の夜、しかも七夕とあってとても賑やかだった。広場では浴衣を着た若者が多く、待合所は島に向かう家族連れ、外国人観光客などでごった返していた。コロナ前を思い出してなんだか嬉しくなった。そうこうしていると乗船時刻に。アネロンを投入してレッツゴー。何度乗っても、乗船口を抜けて黄色の船体が見えた瞬間がとにかくワクワクする。

 

出港後、荷物を置いてデッキへ。夜風に吹かれながらレインボーブリッジをくぐり、東京の夜景が遠のいていく。デッキではみんな楽しげに過ごしている。解放感で最高に気持ち良くなり、もはや鳥は出なくても良いやとすら思えた。

f:id:Canvasback:20230712222929j:image

翌朝4時30分、三宅到着前に目が覚める。部屋は勿論2等和室なのだが、知人のブログを参考にコンビニのホットアイマスクを付けて寝たら良く眠れた。準備を済ませ、おにぎり3個とアネロンを胃に入れる。ちなみに、昼食はバナナ6本で、夕方にカップ麺。観察中はグミを食べ、飲み物はお茶1リットル×2。これが個人的最適解と思う。

 

三宅出港からデッキに出て観察開始。風はあるが、鳥が出ない!オオナギはそこそこ飛ぶものの、遠い。アナドリも2羽を確認したのみ。唯一、御蔵八丈間でカツオドリが船に付いた。距離も近く、ゆっくり観察できた。最後はトビウオを捕まえて去っていった。この個体、双眼鏡で見た時は嘴がピンク色に見えたので当初はシロガシラ雌と思っていたが、冷静に写真を見るとそうでもなかった。ともかくゆっくり見られたのは良かった。

f:id:Canvasback:20230713180535j:image
f:id:Canvasback:20230713180532j:image【カツオドリ】

f:id:Canvasback:20230713180630j:image御蔵島

8:40に八丈到着。今回は珍しくアカコッコを2個体確認できた。1羽は多分雄。道路上を横切りブッシュへ飛び込んだ。もう1羽は、別の場所で囀りが聞こえた。近そうなので待ってみたが時間切れ。

 

復路は気合を入れる。八丈出港後、比較的近くを飛んだオオナギの中に、小柄でパタパタと羽ばたくミズナギが居た。反射的にオガナギ!と思いカメラを向けたが上手くファインダーに入れられずロスト。誤認かもしれないのでこれは計上しない。こういうのをちゃんと記録できるようにならないと。往路よりはオオナギが近く、カツオドリが混じったり、アナドリが飛んだりして退屈はしない。

 

そうこうしているとオナガミズナギドリ淡色型を発見。その後三宅島まで、オオナギに混じりパラパラ断続的に出現した。小柄で頭が小さく、翼も尾も細長いシルエットが目立つ。とはいえ、あくまで近くを飛ぶとわかるというだけで、遠いオオナギに混じっている個体や、一瞬で通り抜けていく個体たちは断定できない。往路も居たんだろうなと思いつつ、遠いのは諦めて見やすい個体だけ捌いていく。それでも淡色型10+を確認。実力不足を感じつつも、嬉しい出会いだった。

f:id:Canvasback:20230713185412j:image
f:id:Canvasback:20230713185416j:image
f:id:Canvasback:20230713185420j:imageオナガミズナギドリ(2枚目左はオオナギ)】

三宅出港後はミズナギが減り、アナドリがパラパラ飛ぶのをただ眺める時間に。しかし、この鳥も3年ぶりに見たので、雰囲気など新鮮で面白い。翼が長くて、ウミツバメのスピードフォルムといった感じ。その後も特に成果はなく、17時、浦賀水道付近で撤収。

f:id:Canvasback:20230713185441j:image【アナドリ】

 

部屋でガッツリ寝て、起きると外は真っ暗。レインボーブリッジを通るところだった。デッキに出て夜景を眺めていると、藤井恵さんの「ことばの贈り物」が流れ、心地良い疲労感と共に心に染み渡る。鳥はあまり出なかったけど良い日だったな、と思った。何も考えず、何にも追われず、誰とも会話せず、広い海をただ眺める時間が自分には必要だったのかもしれない。船を降り、航路の余韻と現実に引き戻されるような感覚の狭間で揺られながら浜松町まで歩いた。この帰り道から見える東京タワーが好きだ。また船に乗ろう。八丈航路は最高だ。

f:id:Canvasback:20230713185508j:image

 

【観察種】

オオミズナギドリ

オナガミズナギドリ10+

アナドリ19

カツオドリ3

アカコッコ2

アマツバメ1

 

 

 

 

 

 

 

推定アカメジロ その後

12月と2月に埼玉県で観察し本ブログに記事を書いた推定アカハジロ×メジロガモ雄個体について、3月に東京都でも同一と思われる個体を観察した。

f:id:Canvasback:20230530182853j:image

f:id:Canvasback:20230530182924j:image

f:id:Canvasback:20230530182945j:image

(2023/3/10 東京都)

場所は東京都心の有名な池。最初の2箇所からは15〜20キロほどの地点。知人に連絡をもらって行った。知る限り2/26から観察されており、居る日と居ない日があったようだ。

今回はホシハジロ10数羽と共に足元に浮かんでおり、観察しやすかった。埼玉個体と各特徴に矛盾はなく、同一個体と推定する。

知人に言われて気付いたが、肩羽に微細な波状斑がある。ただし、その程度はホシハジロとの交雑を肯定するほどではなく、近くで見ても他にホシハジロ要素はない。日本のカモ識別図鑑(通称カモ図鑑)によるとメジロガモにも微細な斑があるらしいので、やはり結論としてはアカハジロ×メジロガモで良いのではと思う。

 

本個体は今季何箇所ものポイントで観察することができ、思い出深い個体となった。来季も帰ってきた場合、埼玉・東京圏ならどこに出てもおかしくないと思うので、これを見ている方は、もし本個体と思われるものを見かけたら連絡頂けると嬉しい。

ウズラ観察

よく春先にウズラ探しをしている友人が居て楽しそうなので、自分も去年から始めた。

2022年4月10日、とりあえずよく行く河川敷の農耕地で探してみたところ、鳴き声のみを含むと5個体を確認できた。翌日は1個体で、その後も4月中に数回行ったが確認できなかった。

2023年は4月3日にシーズン初めて同地へ。農地に点在していた耕作放棄地が殆ど農地化されており苦戦を強いられたが、どうにか3個体。その後2回行ったが、共に確認できなかった。

当地に頻繁に行くのは春秋のシギチシーズンだけなので年間通しての動向はわからないが、4月上旬に見やすいタイミングがあることは間違いなさそうだ。

f:id:Canvasback:20230421172152j:image

f:id:Canvasback:20230421172300j:image

(上: 2023/4/3 下:2022/4/10 共に関東)

 

環境は、当地では堤防の斜面と耕作放棄地が主である。今年は耕作放棄地が殆どなかったので、3個体すべて堤防の斜面で観察した。居るのは乾燥した膝丈より低い草地で、ウズラでいえば、かがむと全身隠れるが、立ち姿勢で囀る時は顔が出るくらいの草丈だ。

f:id:Canvasback:20230421172917j:image

環境(鳥は映ってません)

 

去年も今年も、囀る雄を観察できた。ポケモントゲピーのような独特な声だった。しばらく待つと、目立つところに出てきて立ち姿勢で胸を張って囀っていた。何かに警戒すると、姿勢を低くして草に潜り、小走りで移動していた。小トトロと中トトロがどんぐりの袋を持って逃げるシーンに似ている。朝夕でないと厳しいのかと思いきや、正午ごろにも盛んに囀っていた。

f:id:Canvasback:20230421172958j:image

f:id:Canvasback:20230421205909j:image

 

ここまで、まだ浅い観察経験を備忘録がてらにまとめてみた。個人的にはかなり好きなタイプの鳥なので、今後は他の季節にも探してみて、当地での動向がわかってくると良いなと思っている。生態や性齢識別等は「BIRDER 2020年1月号『Young Gunsの野鳥ラボ』」に詳述されている。

 

ウズラで検索しても、ウズラの卵の話やウズラシギの話ばかりで、ウズラそのものの観察記事がなかなかヒットしない…!

多摩川のヒメハジロ

f:id:Canvasback:20230221095057j:image

ヒメハジロ(2023/1/28 東京都 多摩川

 

この冬、最も話題になった鳥といえばこの個体だろう。少なくとも2ヶ月以上は滞在し、出現場所が駅近・広い河川敷・トイレあり等々の条件が噛み合い、近年の珍鳥としては珍しく、みんなで楽しみやすい状況だったように思う。かねてから見たかった鳥だったこともあり、自分も3回見に行った。

 

最初に見に行ったのは12月11日。始発で現場に向かう。情報を知ってから数日経っていたが、ちょうどそのタイミングで自分は東京を離れていたため、出先から友人やネットの情報で滞在を確認して安堵する、という時間が続いていた。いざ到着し、はやる気持ちで川面に浮かぶオオバンを流していると、遠くに一際小さくて白いカモが潜水を繰り返していた。喜びや興奮より安堵の方が大きかった。

f:id:Canvasback:20230221104629j:image
f:id:Canvasback:20230221104633j:image

f:id:Canvasback:20230404161809j:image

(2022/12/11)

それからはのんびりと観察、撮影に興じる。比較的近距離で見られたが、ヒメハジロの動きに合わせて人の群れが大移動するので、それには流石に多少警戒しているようだった。とはいえ、水中を泳ぐ様子まで見える機会は滅多にないだろう。オオバンと行動することが多く、頻繁に潜水を繰り返していた。餌は一応藻を食べているような様子は見られたが詳細不明。陽が出てくると、構造色の頭部がとても鮮やかだった。頭の形状やフォルムも、状況で結構変わって見えた。

 

その後2度見に行ったが、年明けくらいにはかなり人も減り、良い現場であった。他の鳥も多く、イカルチドリハイタカなどがよく見られた。特にセグロセキレイの観察が楽しかった。また、12月は他のカモは少ない印象だったが、1月28日に行った際は、オカヨシガモハシビロガモコガモなどが計数百羽見られた。

f:id:Canvasback:20230221105125j:image

(2022/12/15)

 

ネット情報によると、本個体は2月中旬に姿を消したらしい。無事に繁殖地に辿り着いていることを祈る。

 

推定ホシハジロ×メジロガモ雄

f:id:Canvasback:20230302162955j:image
f:id:Canvasback:20230302162951j:image
f:id:Canvasback:20230302162948j:image

推定ホシハジロ×メジロガモ雄

(2022/12/18 埼玉県)

ホシハジロ300+に混じる。今年1/17にも観察できたが、常にかなり遠かった。

全体的にホシ寄りだが、胸が特徴的。中央下方は黒く、脇や首側に向かってグラデーションで赤くなっていくパターン。体色は全体的に灰色みを帯び、虹彩は赤っぽいがやや淡色寄り。尾筒は黒いが一部やや赤みを帯びる。体はホシと同大だが、やや寸詰り体型の印象。総合的にメジロガモとの交雑で良いと思う。

特徴的な胸のパターンに関しては、知人に「この手の交雑個体では、胸の中央下方に細い黒色部があることが多く、それが強く出たのでは」という指摘を頂いた。

 

1月以来しばらくこの場所には行っておらず消息を把握できていなかったが、先日別の知人が直線で25キロほど離れた地点で観察した個体が、恐らく同一個体であることがわかった。日常的に往来しているのか、移動時期が始まって動いたのかは断定できない。いずれにせよ、今後も両地点で同一個体のカモが観察できるかもしれないので要注意である。

ヒメハマシギ(2021/6)

2021年6月22日の昼、いつものように自宅で大学のオンライン講義を受けていると、衝撃的な連絡が飛び込んできた。「ヒメハマ夏羽」「待ってれば5mで見れる」

場所は関東のとある砂浜。家からは車で3時間。これは行くしかない。オンライン講義をラジオがわりに車内で流しながら現場に向かうが、内容はあまり入ってこない。抜けないでくれ…。

 

現場に着いたのは16時。連絡をくれた友人は帰ったようで、広い砂浜に自分ひとり。少し歩くとポイントに到着。はやる気持ちを抑えながらしゃがんでにじり寄り、少し遠目の草陰から覗き込む。単独で小型のシギが佇んでいるのが見えた。いた!!ハマシギのような嘴と異様なプロポーション。胸から体下面まで及ぶ黒斑、頭部と肩羽の赤が目立つ鮮やかな夏羽。ヒメハマシギだ。美しい。

f:id:Canvasback:20230217114811j:image
f:id:Canvasback:20230217114807j:image

 

砂浜の起伏を利用しつつ、匍匐で少し前の草陰まで寄ってみる。かなり近い。しばらく待っていると、採餌しながら向こうから近づいてきた!距離は5mを切っている。ヒメハマシギを見る機会はあるかもしれないが、「関東で」「夏羽を」「この距離で」「一人で」見ることはもうないかもしれない。そのありがたみを感じながら、心ゆくまで観察した。そして、この距離ならと期待したミズカキもバッチリ見ることができ、陽が傾いてきた17時半頃撤収を決めた。三列風切と雨覆がかなり摩耗していたことから1sの可能性が高そうだ。

f:id:Canvasback:20230221110657j:image
f:id:Canvasback:20230217114846j:image

f:id:Canvasback:20230221110809j:image

 

この個体はその後数日滞在して姿を消した。発見した友人とは今でも会うたびに語り草になる、素晴らしい思い出となった。